背景には、ロッジアを隔てるパラペ(欄干)のすぐ後ろに道が見えます。レオナルドは、道が通っている褐色の地面の部分を、絵を構成する面の一部としてきちんと描ききっていません。道は、鑑賞者の目を、絵の奥へ、連なる山々の方へと導いていきます。

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地面部分

赤褐色の地面部分は、なだらかな傾斜をもつ丘を表しています。絵画的な観点からは、この部分は他の風景の部分に比べて、明らかに丁寧に描きこまれていません。その筆触の軽さを見ると、この箇所はおそらく意図的に、下書きの状態に留められたのではないかと思われます。

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モナ・リザの左肩の線を延長するように橋が描かれています。褐色の地面部分の上に描かれたこの建造物は、一見野生そのものに思われる風景の中において、人間の存在があることを表しています。左側に見える道の蛇行と同じく、水流の上にかかった橋のアーチ形は、鑑賞者の視線を絵の奥に見える、水面に縁取られた山々へと導いていきます。

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建物

山々の連なりの最初の峠の上には、ほとんど肉眼で識別できないような建物が数軒あります。空気遠近法の巧みな効果によって、その輪郭は少しずつ消え、その色も空気の青色の中へ吸い込まれています。しかしこれらの建物は、酸化したニスの厚い層のせいで、今日では判別が難しくなっています。

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山の連なり

水辺に縁取られた山々の連なりは、《モナ・リザ》の背景の幕を成しています。今日では、酸化したニスの積層が原因ですべての細部は識別できませんが、この風景の描写は、まさにレオナルドの科学的、芸術的探求の到達点を示すものです。空気遠近法の巧みな効果によってマチエール(素材)の中で溶け合っている建物や水面などの多くの要素は、山々の中へ吸い込まれていくようです。

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水面

背景のいたるところで、山々のふもとに水面が描かれています。絵の右側には、湖があることがはっきり見えます。

左側には、モナ・リザの視線の高さに、右側の湖から連続して水面が一筋描かれています。この左右の線は水平線を表しており、モナ・リザの存在により分断されていますが、彼女の目線と水平線を一致させることで連続性を保たせています。

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