1 – 彫像

「勝利の女神」像は、別々に彫刻された複数の大理石の塊を組み合わせた構造になっています。

この技法は、体から突出した部分については、ギリシアのアルカイック期の彫刻家がすでに完成させていましたが、ヘレニズム時代には、体全体にも用いられるようになります。
この彫像の場合は、乳房の下から足までが大きな一つの塊で、その上に、胸から頭までの、より小さな塊が載せられています。

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2 – 翼

本体とは別に二枚の大きな大理石の板に彫刻した両翼を、外からの支えを一切用いずに、完全に張り出した状態で保つことには、バランスの上で深刻な問題がありました。

これを解決するために、彫刻家は、両翼を付け根の部分から段状に切り離すとともに、「勝利の女神」の体の後ろに張り出す形で彫刻した、羽で装飾された持送り(コンソール)部分に、それをはめ込んで接合しています。

さらに、この接合面を水平より少し傾かせることで、翼の重みが体へとかかるようにしました。

全くの離れ技とも言えるこの方法で、通常ブロンズ彫刻のみに用いられる大規模な張り出し構造が、大理石で実現されたのです。

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3 – 腕と足

二本の腕と足は、別々に彫刻され、組み合わされています。

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4 –衣の布

後方にはためく布の垂れ端など、衣を構成する幾つもの布の部分が寄せ合わされています。

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5 – 船

敷石を6枚並べた長方形の土台の上に、もともと金属製の鎹(かすがい)で接合されていた17個の塊が、前方をやや反らせる形で、三段の水平な層として配置されています。

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7 – 後方の基盤

後方の、オール(櫂)収納箱の層は、横に並んだ二つの塊から、甲板部分の層は三つの塊から成っています。

甲板後部の中央の塊は現在の彫像群から欠けている状態です。この塊は、シャンポワゾーがサモトラキ島に残し去ったまま、二つに割れた状態で現在でも当地に置かれています。

この塊は、2トンを越える重量があり、もともとあった場所に入れると、張り出しになったオール収納箱の突出部を支えることができたのです。

この塊にはまた、彫像の下部を嵌め込む溝が設けられています。

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6 – 竜骨(キール)の先端部

竜骨(キール)の先端部の塊は、ほぼ全体が台座から離れて宙に浮いています。

この塊を浮かせたままにするために、彫像の位置は、その重心がちょうど塊の後方に垂直にかかるように計算されています。2.5トンから3トンある彫像の全重量が、この部分にかかります。

この複雑な仕組みは、石の竜骨に、本物の木造船がもつ自然な形とダイナミックな勢いを与えるために用いられているのです。

もし彫像の位置を変えたら、台座の前の部分がすっかり崩れてしまうでしょう。つまり、彫像は、この作品のバランスを安定させるため、不可欠な役割を果たしているのです。

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