バルブ(ひげ)

《モナ・リザ》のバルブ(ひげ、パネルの縁)は、この絵が描かれているポプラ材パネルの四辺に見ることができます。絵の制作の前に、木製の基底材は枠にはめ込まれますが、その枠の取り外しの際、基底材の各辺に見られる絵の具の塊のことを、バルブと呼びます。バルブの存在は、作品の全形図がそのまま保存されていることを証明しています。

バルブの一部は、レオナルド・ダ・ヴィンチの死後に塗られたニスの積層に覆われていないので、オリジナルの色調により近い塗料の色合いが現れています。

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割れ目

《モナ・リザ》が描かれているポプラ材の薄いパネルは、500年という年月を経て大きな変化を被りました。パネルはわずかに変形しています。湿度や温度の変化にさらされたため、中央部がへこんでしまいました。そのために、11センチの割れ目ができたのです。

この割れ目は以前、絵の裏側で、二つの二重燕尾形蟻枘(ありほぞ)によって固定されていました。

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縦方向のひび割れ

《モナ・リザ》の絵の具の層には、縦方向のひび割れが見られますが、特に割れ目の延長線上に顕著に現れています。このくすんだ色の網の目のせいで、モナ・リザの顔部分に見られる絶妙な影から光への移行も滑らかさを失っています。このひび割れは、《モナ・リザ》が描かれたのがきわめて薄いポプラ材パネルであること、そしてその中央部がへこんだことによって発生したのですが、この変形は、制作以来この絵が被った湿度・温度変化の影響によるものです。

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対角線方向のひび割れ

対角線方向に延びたひび割れが網の目状になって現れ、特に《モナ・リザ》の絵の具の層の四隅に見られます。これは、絵がはめ込まれていた木枠がポプラ材の薄いパネルを押したことで発生したものです。

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ラキュヌ(欠落)

モナ・リザの左肘部分に、ラキュヌ(欠落)が見られます。これは、すばらしい保存状態を保っていたこの作品の、唯一の傷となる部分です。1956年に、一人の情緒不安定な男が投げた石が、保護ガラスを打ち破ってしまい、その衝撃とガラスの破片によって、絵の具の層と地塗りが跳ね飛ばされてしまったのです。

それ以来この作品は、防弾ガラスに守られて展示されています。

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