戦艦
- サモトラケのニケの台座は、ヘレニズム時代の典型的な戦艦の前方部分を表わしています。この時代には、造船術の革新が多くみられます。
ヘレニズム時代の浅浮彫:戦艦、前3-前2世紀、サモトラキ島、考古学博物館
- 最も有名な技術革新は、船に大型のオール(櫂)収納箱が設けられたことです。これは船体に沿って張り出して作られた木造の構造物で、従来より長く、従ってより強力なオールを支える役目を担いました。さらにそれは、数段に重ねられたオールをも支えていたのです。
パレストリーナのモザイク(部分)戦艦、前1世紀初頭、パレストリーナ、コロンナ=バルベリーニ宮考古学博物館
- ギリシアの戦艦の主要な武器はその船嘴(し)でした。これは喫水線の位置にあり、舳(へ)先のさらに高い位置にある小船嘴を伴っていました。イスラエルの海岸沖で発見された、全長2.27m、重量465kgのブロンズ製の船嘴は、敵の船を破壊する恐るべき兵器の実態を如実に伝えています。
アトリットのブロンズ製の船嘴、前2世紀、ハイファ、国立海洋博物館
- サモトラケのニケの台座にも同様な船嘴が、竜骨(キール)の石塊の先端に彫刻されていました。ちょうど、ロドス島の考古学博物館に保存されている、もう少し小さな船艦の彫刻の断片に見られるようなものでした。
ロドス島の大理石製船嘴、前2世紀、ロドス島、考古学博物館
- サモトラケのニケの船形の台座の舳先に付いていた船首の装飾もまた、砕けてしまっていますが、当時の貨幣から、その形を想像することができます。
アンティゴノス・ドーソーンが描かれた4ドラクマ銀貨:アポロンと船首、前227年以降(?)、パリ、フランス国立図書館
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船首を再現した解説付デッサン、V・フォレのデッサン






