眼差し

モナ・リザの眼差しは、このレオナルドの絵のまさしくアトリビュート(持物)となっています。その眼差しは作品を観る者に訴えかけ、たちまちその意識を虜にしてしまうからです。もっともそれは、肖像画ジャンルにおいては唯一無二でも斬新なものでもありません。しかし、レオナルドはそこに真の生命の奥行きを与えています。そこには、かすかな微笑みを表すために、目を細める動きが表現されているのです。

close cartel

微笑み

有名なモナ・リザの微笑みは、この絵を、魅惑的かつ多義的な作品にしています。レオナルドは、一瞬で消え去るような表情をうまく捉えています。それを達成するために、レオナルドはまず陰影の最初の下書きを描いたのち、影から光への絶妙な移行によって、形に輪郭を与えていきます。こうして醸し出されるスフマートの効果をご覧下さい。それは絵のマチエール(素材)を震えさせ、微笑みに魂を吹き込み、《モナ・リザ》に生命を与えていることがわかるでしょう。

リザ・ゲラルディーニの心理的表現を具現化したこの微笑みは、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画技術の到達点でもあるのです。

close cartel

ポッツェット椅子

モナ・リザが腰掛けている椅子は、木製で半円形をしています。手すり子で支えられた肘掛けがあることから、イタリア・ルネサンス期の典型的な腰掛け、ポッツェット椅子であることがすぐに判別できます。

close cartel

小円柱とパラペ(欄干)

パラペ(欄干)の上に乗っている小円柱は、モナ・リザが腰掛けているロッジアの空間を区切っています。小円柱の柱脚はよく見えていますが、柱身はかすかに見える程度です。小円柱は遠方の風景を左右で切り取っているばかりではなく、モデルの像を背景から区切っています。

close cartel