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右足

体とは別に制作された両足部分は、現存しません。しかし、足の位置は、足が付いていた大理石の表面に残っていた跡から復元できます。むき出しのかかとが残っている右足は、かかとの部分が軽く持ち上がる形で、土台の上に乗っていました。
 

 

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左足

体とは別に制作された両足部分は、現存しません。しかし、足の位置は、足が付いていた大理石の断面の場所と形から再現することができます。左足は、まだ宙に浮いていました。というのも、「勝利の女神」は、歩いているのではなく、飛行を終えて、台座の表面にそっと舞い降りたところだからです。

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キトン

「勝利の女神」像は、「キトン」という、乳房の下を帯で留めて着る、足元までの長さがある薄い布のチュニックを身にまとっています。
 

この流れるような衣の巧みな表現に注目してください。体を覆うというよりもむしろあらわに見せています。腹部や、左の腿の位置で、引っぱられた布が肌に貼り付き、葉脈のようなひだが波打っています。左足の前側で自然に下へ落ちている部分は、表面に刻み目が入り、薄い布に特有の波打つ効果を出しています。

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ヒマティオン

腰の位置に太く巻き付けられた「ヒマティオン」と呼ばれるマントは、左側がほどけかかっています。量感のあるひだの流れが、腰の右側から両足の間をつたって降り、さらに深いひだができた布はそこで積み重なって前へと落ち、地面に引きずっています。

このマントの深く掘られた厚い衣紋(えもん)の表現は、マントによって部分的に覆われているチュニックのひだの表現と、対照的です。

後方では、マントのもう一方の短い端が、左腿の後ろではためいています。
布の折り返しに沿って見ると、衣の表と裏で、二種類の異なる織目があることが分ります。この繊細な衣紋の表現が、きわめて洗練されたものであることは一目瞭然です。

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右肩と右の乳房

右肩と右の乳房が上に上がっていることと、衣のひだが乳房の先端を起点としていることから、胸部の動きがはっきり表れています。この動きは、両腕の位置から自然に生じるものです。右腕は上げられ、左腕は恐らく下げられていたのでしょう。ただし、体がねじれるほどではありません。両肩は腰の両側と同じく、同一面上に位置し、しっかりと正面を向いています。

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チュニックは、丈を短くするため帯で持ち上げられていますが、帯は折り返しで見えなくなっています。その折返しが腰まで落ちていて、それを乳房の下に見える二つ目の帯を用いて締めています。

二つ目の帯の大部分は石膏で復元されています。

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肩紐?

右の乳房は、ほとんど透明に近い布で部分的に覆われていました。右肩の頂点部分に、布を留めていた細い肩紐の名残が見てとれます。左肩にも同様に肩紐があり、それでゆるく布が留められていたと思われます。

 

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左の翼

左の翼を存分に鑑賞することができるのは、彫像を前にして、右斜め45度の位置から見たときです。体の近くの渦巻き状に並んだ羽根や、後方に流れている長い風切羽が、彫像に動的な効果を加えています。同時に、水平線よりわずか上を向いたこの翼の大胆な配置も見事なものです。
左の翼の大きさと位置が、作品の動的な構図をさらに力強いものにしています。

 

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右の翼

彫像の右の翼はすべて石膏による復元です。

ただし、本物の右の翼の残された断片から、

右の翼は左の翼と対称ではなく、もっと高く、やや斜めに、外向きに立っていたと推測されます。

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後方の布の垂れ端

マントの端は左の腿の後方ではためいています。作者がこの作品を現実に制作したことはもとより、この布の垂れ端を体から分離させるというアイディアそのものが、実に驚くべきものです。マントが風の力のみで体に貼付いていることを表し、その効果を手に触れられるまでに感じさせたこの手法は大変劇的で、布がほどけていく一瞬の時を大理石に刻むという、その選択はきわめて大胆です。

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